★だれかなにかどこかで★

★だれかなにかどこかで★

曇り空のあわいから蛍光色のゆうやけがさしていました。
重い灰色の雲を縁取りながら 
ゆっくりと流れて行く先に光のカーテンが広がっていて 
その向こうに本当の故郷があるような気がしました。
それがどこであるのかは、わからないけれども 
いつも ここではない どこかに 
本来の自分が生きるべき場所があって 
見たこともないのに 懐かしい魂を持つ人が 
待っていてくれるような気がしました。
 本当の自分 
それは今ある自分であるはずなのに 
いつもどこかで 
こうじゃない 
これで良いわけがない 
もっと崇高な生き方を求めてしまう。
今だって 頑張っている事を 
自分が一番良く知っているのに 
そんなものじゃない 
それが実力じゃないと 
自分で追い立てる 
あれも駄目 これも駄目 もっと もっと 
それは許されない お前にそれを許していない 
ものすごく厳しい戒律で いつのまにか 自分を攻め立てている
他人になら 許せる事 ほほえましくすら思う失敗を 
自分には許さない厳しい番人が魂の鞭を振るう 
魂の故郷 光のカーテンの向こう側
自分の名前がない場所で 
築いたものが なにもない場所で 
この番人から逃れて 
そう 筋肉だけの微笑みを捨てて 
子供のように 笑いたい 
けして 甘えては いけないなんて思ってしまう 
重い呪いをふりきって 
本当は いつも一人が不安で 
真夜中が怖くて眠れないと 
泣きながら抱きしめられて眠りたい 
私が私であるがゆえ 
光のカーテンの向こうへ冒険にはいけないけれど 
体は どこへでもいけるけれど 
心は 海の遺伝子で 
どんなに揺れても 暴れても 
地球に愛され 重力の枷で 飛べないままだ 
この場所で この夕暮れに 
心の代わりに 空をかけるウェーブで 
なにかと だれかと どこかを探して 
一生懸命揺れている 
夕焼けが冷めて 光のカーテンが 消えた頃 
隠れていた宇宙が 顔を出して 
星が 孤独のエンブレムを掲げて 
強く生きようとする魂に 
ささやかな光を灯してい 



© Rakuten Group, Inc.